健診で初めて指摘された心房細動(心房粗動)はだいたい治ります。
「健診で初めて不整脈を指摘されました」
そういって外来に来られる方は非常に多いです。
その多くが「期外収縮」という、あまり害の無い不整脈が多いです。
しかしその中には「心房細動」や「心房粗動」といった不整脈の方も多くいます。
そういった方々を診る時、「1-2年前の健診では何も指摘されなかった」という情報は非常に重要になります。
心房細動などの不整脈が発症して1-2年しか経過していない場合、正しい治療を行えばほとんどのケースが元の脈に戻るからです。
下の心電図は健診で初めて不整脈を指摘されたという方の心電図です。
これは「心房粗動」という、「心房細動」と非常に似た不整脈です。
放置しておくと、心臓の機能が衰えたり、脳梗塞の危険性が通常の3倍になる不整脈です。
特徴としては、ギザギザした波形が目立ちます。
同じ患者さんの、治った後の心電図と比較すると良く分かります。
下の心電図は治療後の心電図です。
ギザギザした波形が消えて、非常にきれいになっています。
治療としては、まず第一に脳梗塞予防の為に血液をサラサラにする薬を飲んでもらいます。治療途中に脳梗塞を起こしてしまったら元も子もないです。
そして治る可能性が高いと判断して、ベプリコールという抗不整脈薬を開始しました。
ところが2ヵ月経過しても元の脈に自然に戻る事はありませんでした。
そこでアミオダロンという薬も追加して1ヵ月待ちました。
しかしそれでも脈は不整脈のままでした。
多くの方はこの辺であきらめてしまうかもしれませんが、自分はまだ治ると信じて更に一歩踏み込みます。
3か月間血液をサラサラにする薬をしっかり飲んでもらっており、心エコーで心臓の中に血栓(血の塊)が無い事を確認したところで、「電気ショック」を使いました。
普通にやったらものすごく痛いので、薬で数分間だけ眠ってもらってから電気ショックを行います。
非常にイメージが悪い治療ですが、不整脈を治すという点においてはこれほど頼りになるものはありません。
そして「100J(ジュール)」という出力で電気ショックを掛けたところ、無事不整脈が元に戻りました。
その日から約1年が経過していますが、今のところ不整脈の再発はありません。
薬も最初は何種類も飲んでいましたが、半年以上経過した時点で、薬を大幅に減らし、現在では1種類だけで不整脈の再発を抑えています。
もちろん今後も再発する可能性はあるため、定期的なチェックは必要になりますが、高い薬を続ける必要もなくなり、脳梗塞のリスクを高める事無く生活を送ることが出来ています。
1-2年以内に発症した「心房細動」や「心房粗動」といった不整脈は、正しく治療を行えばちゃんと治ります。もちろん全てではありませんが、高い確率で治ります。
もしその様な方がいましたら、一度ご相談下さい。
「私が治します!」とまでは言いませんが、治る確率が高いかどうかの判断や、治す事が出来るような病院を紹介する事は出来ると思います。