心房細動の管理について その3
慢性の心房細動を比較的安全な状態に維持(管理)する上で重要な事は以下の3つと考えています。
①血液をサラサラにしているか
②脈拍数のコントロール
③血液検査のBNPもしくはNT-ProBNPの管理
③について
心房細動の管理が上手く出来ているかどうかを評価する上で、とても簡単で分かり易いのが、「BNP」、「NT-ProBNP」の項目です。
どちらも同じ様な物であり、両方を検査する事は基本的にはしません。
どちらか医師が好きな方を選ぶというものです。
違いは出てくる数値が違うというだけです。
ちなみに私は「BNP」を選択しています。
心不全の傾向があれば数値が上がり、落ち着いていれば低い値が出ます。
BNPが50以下であれば、ほとんど問題なしと考えて良いと思います。
50~100になると、少し注意はしますが、基本的には問題なしです。
100を超えてくると、心不全対策を検討し始めるといった具合です。
しかしこれは不整脈や心筋梗塞などの心臓の病気を持っていない方の場合です。
心房細動が持病にある場合は、BNP値が基本的に上昇します。
心房細動でコントロール良好とされているBNP値は200~400程度です。
心房細動が持病にある中で、BNPが100前後の場合は、かなりコントロール良好と考え、場合によっては血液サラサラの薬しか飲んでいないという事もあります。
自分としては、心房細動の患者さんを診る場合、BNPが200前後で推移するように薬を調整しています。
また心房細動以外に心筋梗塞の既往がある患者さんだった場合は、BNPが500前後で良好なコントロールと考える事もあります。
肥大型心筋症などの少し変わった病気が背景にある場合、BNPが500~1000で推移する事もしばしばあります。
無理にBNPを下げようと薬を調整しても、逆に具合が悪くなる事もあります。
患者さんの年齢や状態、既往歴などを考慮して、その患者さんの心不全管理をするのに最適なBNP値を見極める必要があります。
「○○さんのBNPはだいたい●●~●●が適切なので、今はコントロール良好です」
と説明すると、非常に分かり易いと思っています。
「今の状態でBNPが●●を超えたら手術を考えましょう」など。
しかし分かり易い反面、数値が基準値を超えた時の恐怖もあります。
とは言えBNP値を下げるための具体的な策を伝え、それを実行して数値が下がると、患者さんの病気の治療へのモチベーションも上がります。
「アメとムチ」の上手い使い分けは、医師の話術などの技量に関わってきます。
<余談>
ちなみに最近は人間ドックや健診などでもBNPを測定する事が多いです。
しかしそういった場合、BNPが20を超えると心不全傾向と診断されてしまう事があり、その精査目的で病院に来る方が結構います。
そういった方々のほとんどは特に問題なしで終わります。
心電図、レントゲン、既往歴、症状が特に問題なければ、BNPは測定してもあまり意味がありません。
しかしそうはいっても何も検査せずに大丈夫ですと言うのはあまりに説得力がないので、だいたいは心エコー検査を行い、特に問題ない事を確認して終了となる事が多いです。