小岩医院の日記

東京都江戸川区東小岩で内科医(専門は循環器)をしています。日頃どのような事を考えながら診療を行っているかを書いていけたらいいなと思っています。

コロナ関連の出来事 その2

今日は柏市の病院で当直をしています🏥
コロナ治療の最前線以外でもコロナの影響で医療の日常が少しずつ変化しています。
今日はそんな一例を経験しました。
 
「自宅で家族に見守られて息を引き取る」
そういった最期を迎えられる人は非常に少なく、ほとんどの場合は病院などの医療施設で迎えます。
その中で自宅で急に心肺停止となり、病院に救急搬送される事は多く、掛かりつけの病院が対応できず、搬送された先が初診である場合も多々あります。
 
今日は80歳前後の方が初診で心肺停止の状態で救急搬送されてきました。体は痩せていて、数か月前から自宅で寝たきりであり、明らかに老衰の状態でした。
自院が掛かりつけ医ではない上に、頭・胸・腹のCTで明らかな病死の原因が特定できない場合、通常警察介入となり警察による検死が行われます。
普段であれば警察の方と10分前後のやり取りの後、警察がご遺体を収容して終了となります。
しかし今回はCTで軽度の肺炎があったという事で対応がガラリと変わります。
PCR検査を行ってコロナが陰性という結果が出るか、医師が絶対大丈夫と判断すれば収容するというのです。
このご時世で絶対大丈夫なんて言えるわけもなく、PCR検査をする流れになりますが、休日にすぐできるわけがありません。
保健所に連絡をしたところ、事情を説明しても検査が出来るのは早くても明日で、結果が出るのは明日の夕方。近くの大学病院でも検査を受けられずに4名のご遺体が安置されているというのです。
もちろん検査結果が出るまで病院で安置するしかなく、結果が出るまで家族も接触できないので、自宅へ連れて帰るという選択肢もありません。
仮に今回無事掛かりつけ医に搬送されたとして、CTで肺炎らしき所見を認めた為、死亡診断書に死因:肺炎と書いたとします。
すると今度は葬儀屋さんからコロナかどうか調べてほしいという話が出ます。コロナが陰性と出ない限り引き取れないというのです。
葬式を行うにしても自粛ムードの現状では、細々と行うしかありません。
またコロナとは全く違う病気(癌など)の場合でも、病院で亡くなる時は面会規制の影響で以前の様に家族に囲まれて息を引き取るというのが難しい状況です。
 
今まで多くの人が想像していた「人の最期」がコロナの影響で大きく変わってしまっています。
昔のドラマであったような、自宅で家族に手を握られながら息を引き取るというのは、在宅介護、訪問看護、24時間対応の訪問診療などなど、多くのサポートがないと実現不可能になってきています。