睡眠時無呼吸が原因の心不全 その2
・ちゃんと睡眠時間は確保しているのにどうも眠い。
・ちゃんと寝ているのに疲れが取れない。
・今まで感じた事がない息切れを感じるようになった。
・まだ若いはずなのに疲れやすい。
こういった症状を感じている方は少なくありません。
病院へ行くと「心不全」と言われて、薬が色々処方されてしまう事があります。
原因を調べても、原因不明で終わってしまう事もしばしばあります。
実際に他院で原因不明と言われ、心配になって当院(千葉西総合病院)に来られる方もいます。
しかしそういった方々は、すでに色々と検査されているため、当院で一通り調べても、やはり簡単には原因を特定する事は出来ません。
その様な時は、「睡眠時無呼吸症候群」の可能性を常に考える必要があります。
睡眠時無呼吸というと、「太っている」「首が短い」「いびきが酷い」などの項目がそろっていないと検査すらしないという病院もあります。
実は痩せている人でも睡眠時無呼吸があるという事実はあまり知られていません。
しかも一人暮らしだったりすると、「いびきが酷い」「呼吸が止まっている」といった情報が得られません。昔よく友人に指摘されたといった情報が得られるくらいです。
そこで、もしかしたらあるかもしれない、とりあえず一度くらい検査してみよう、くらいの気持ちで検査をしてみると意外な結果が返ってくる事があります。
今回の症例は、50歳の男性で、170cm、65kgの平均的な体型の方です。
以前から息切れが酷く、ついに呼吸が苦しくなったという事で救急搬送され、心不全の診断で入院となりました。
心電図、心エコー、血液検査などを行いましたが、心臓が悪いという情報以外は得られませんでした。
念のため「いびきが酷いと言われた事はありませんか?」と質問したところ
「学生時代に、いびきが酷いと何度か指摘された事がある」という返答でした。
そこで念のため睡眠時無呼吸症候群を調べる検査である、「簡易型睡眠時ポリグラフィー」を行いました。
すると下記の様な結果が返ってきました。
色々な情報がありすぎて、はっきり言ってよく分からないと思います。
そこで一番重要な項目なのが、「ODI」です。
睡眠中に酸素濃度が3%以上低下するのが1時間に何回あるかというものです。
この方の場合、ODIは31.9でした。
30を超えると重症と考えられています。
更に上の図をよく見ると、snore(いびき)の程度が少ない事が分かります。
実はいびきはあまりしておらず、静かに呼吸が止まっているという事が分かります。
それだと他人が気付くのは難しいかもしれません。
そこで睡眠時無呼吸症候群に対する最も標準的な治療である、CPAPを開始しました。
治療開始して最初の2週間くらいはむしろ寝るの難しく、むしろ余計に疲れるという事があります。そこであきらめずに辛抱強く続けると、徐々に良い効果が出てきます。
治療開始から約2ヵ月、3か月経過したときの血液検査が下記の通りです。
100以上から軽度心不全と考え、500を超えると重度と考えています。
1000を超えるとかなり重症です。
そのため最初は心不全の治療の為に何種類もの薬を使わざるを得ませんが、
12/23のBNPが3まで下がっており、お薬終了も目の前です。
意外な人が、意外と睡眠時無呼吸症候群を持っているという事があります。
心不全状態まで至っていないとしても、眠い、疲れやすい、息切れなどの症状がある場合は一度は調べてみると良いかもしれません。