小岩医院の日記

東京都江戸川区東小岩で内科医(専門は循環器)をしています。日頃どのような事を考えながら診療を行っているかを書いていけたらいいなと思っています。

たこつぼ心筋症ってご存じですか?🐙

最近当直していてよく出くわすのが、「たこつぼ心筋症」というものです。

この1か月で2人の患者さんを担当しました。

あまり広く世間に浸透している病名ではなく、テレビなどで耳にする事はほとんどありませんが、誰でもなり得て、油断すると怖い病気の1つです。

簡単に言うと、心臓が蛸壺(たこつぼ)の様な形に動くことで、著しく心臓の機能が落ち、その結果、心不全不整脈を起こし、死に至るケースもある病気です。

とは言え、ほとんどの場合は安静を保つ事で1~2か月で回復します。

下絵は実際のたこつぼです。

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入口部分が閉まっていて、胴体の部分が膨らんでいるツボの事です。

実際の検査は下図のようになります。

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胸痛や胸部の違和感、息切れなどを主訴に救急搬送される事が多く、心電図や血液検査を行うと、心筋梗塞とほぼ類似した所見が並びます。

実際には心筋梗塞よりも症状が軽い事が多いですが、検査上は心筋梗塞を強く疑うため、緊急カテーテル検査を行う事がほとんどです。

それで実際に検査をしてみると、心臓を栄養する血管(冠動脈)は正常で、心臓の動きが特徴的な場合、「たこつぼ心筋症」という診断となります。

ほとんどの場合は、入院して安静にしているだけで治りますが、危険な不整脈が出る事もあるため、油断は出来ません。

 

そしてこの病気の恐ろしい所は、誰でも発症する可能性があるという事です。

それは、この病気の多くが「ストレス」が原因と言われているからです。

一般的には原因不明と言われていますが、急激なストレス負荷が原因である事が非常に多いです。

よくあるパターンとしては、親の介護、夫の病気および介護、自身の病気、親族の死去です。

「ストレス性心筋症」という言われ方もしており、過労やストレスが原因で亡くなってしまった人達の中に、この病気が原因であった可能性は非常に高いと思います。

 

この1か月で担当した患者さんの「たこつぼ心筋症」の原因は、「愛猫の死」でした。

10年以上ずっと一緒にいた猫が亡くなり、悲しみに暮れている時に、胸が苦しくなって病院に担ぎこまれました。

過去には胃癌の手術をした直後に急に胸が苦しくなり、心電図で心筋梗塞が疑われ、搬送されたケースもありました。

 

過度なストレスや悲しみは自身の命に関わる事もあります。

十分にご注意ください。