たこつぼ心筋症ってご存じですか?🐙
最近当直していてよく出くわすのが、「たこつぼ心筋症」というものです。
この1か月で2人の患者さんを担当しました。
あまり広く世間に浸透している病名ではなく、テレビなどで耳にする事はほとんどありませんが、誰でもなり得て、油断すると怖い病気の1つです。
簡単に言うと、心臓が蛸壺(たこつぼ)の様な形に動くことで、著しく心臓の機能が落ち、その結果、心不全や不整脈を起こし、死に至るケースもある病気です。
とは言え、ほとんどの場合は安静を保つ事で1~2か月で回復します。
下絵は実際のたこつぼです。
入口部分が閉まっていて、胴体の部分が膨らんでいるツボの事です。
実際の検査は下図のようになります。
胸痛や胸部の違和感、息切れなどを主訴に救急搬送される事が多く、心電図や血液検査を行うと、心筋梗塞とほぼ類似した所見が並びます。
実際には心筋梗塞よりも症状が軽い事が多いですが、検査上は心筋梗塞を強く疑うため、緊急カテーテル検査を行う事がほとんどです。
それで実際に検査をしてみると、心臓を栄養する血管(冠動脈)は正常で、心臓の動きが特徴的な場合、「たこつぼ心筋症」という診断となります。
ほとんどの場合は、入院して安静にしているだけで治りますが、危険な不整脈が出る事もあるため、油断は出来ません。
そしてこの病気の恐ろしい所は、誰でも発症する可能性があるという事です。
それは、この病気の多くが「ストレス」が原因と言われているからです。
一般的には原因不明と言われていますが、急激なストレス負荷が原因である事が非常に多いです。
よくあるパターンとしては、親の介護、夫の病気および介護、自身の病気、親族の死去です。
「ストレス性心筋症」という言われ方もしており、過労やストレスが原因で亡くなってしまった人達の中に、この病気が原因であった可能性は非常に高いと思います。
この1か月で担当した患者さんの「たこつぼ心筋症」の原因は、「愛猫の死」でした。
10年以上ずっと一緒にいた猫が亡くなり、悲しみに暮れている時に、胸が苦しくなって病院に担ぎこまれました。
過去には胃癌の手術をした直後に急に胸が苦しくなり、心電図で心筋梗塞が疑われ、搬送されたケースもありました。
過度なストレスや悲しみは自身の命に関わる事もあります。
十分にご注意ください。