やはり心房細動は治した方がいい。
心房細動の患者が来られた時にまず最初に考えるのは、脈拍数コントロールを主体とする治療を行うか、不整脈を元の脈に戻す治療を行うかをどうかです。
残念ながら元に戻りそうにない心房細動があるのは事実ですが、やはり治りそうなものは治してあげた方がいいと思っています。
ですが、治さなくても問題はないという考えが医療界に浸透しているため、勿体ないと思う事がたびたびあります。
今回は不整脈が治った事で、心臓の機能が回復した1例を紹介します。
上図のように、60代の男性が健診で不整脈を指摘されて来院されました。
すでに左心房(LAD)の拡大が見られており、心房細動になってからしばらく時間が経過していると思われる状態でした。
しかし心電図でf波と呼ばれるギザギザした波が大きく、元の脈に戻る可能性を十分にあると判断し、抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)と抗不整脈薬を開始しました。
もちろんすぐに治りはしませんでしたが、2-3か月辛抱強く待った結果、無事薬だけで元の脈に戻りました。
不整脈が元に戻り、患者さんも気持ちが良くなったと言っていました。
そしてそれから1か月後に心エコー検査を行ったところ、心機能の回復も確認されました。
心エコー検査で心臓の機能を見るとき、一番簡単に分かるのが、「EF」という、心臓の収縮力の指標になるものです。
最初のEFは24.4%とかなり低かったものが、不整脈が治った後は、50.9%まで回復していました。
通常のEFは60~70%で、EFが50%と言ってもやや低めですが、もう少し時間が経てばもう少し回復すると思っています。
このように、正しい治療を行えば、心房細動は元に戻る事が多いです。
もちろん薬を使っても、電気ショックを行っても元に戻らなかった例はいくつもあります。
とは言え、治りそうなものはちゃんと治してあげるのが我々の仕事だと思っています。
脈拍数のコントロールだけでも問題ないというのであれば、今回の例はどうなるのでしょうか。
脈拍数は来院時にそれほど多くないため、抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)だけ処方される場合も多いと思います。
でも実際には元に戻れば心臓が弱っているという心配をしなくて済むので、非常に安心して生活が送れると思います。
心房細動でお悩みの方がいれば、是非一度相談して頂けると幸いです。