良い医者に掛かる方法 その1
「良い医者」と一言でも言っても、患者さんが求める「良い医者」は様々です。
自分は割と包み隠さず患者さんに説明をしていますが、それを気に入ってくれる方もいれば、ズバッと言われて気分を害して離れていく方もいます。
ちなみに病院内でよく聞くクレームでは、「主治医が話を聞いてくれない」「入院していても主治医が会いに来ない」「説明が少ない」「すぐ怒る」などなど。
という事は、これらをクリアしていれば「良い医者」という事なのでしょうか??
先に言っておきますが、「話をよく聞いてくれる」「優しい」「腕が良い」「よく会いに来てくれる」「頭が良い」「外来が混んでいない」これらの条件を全て満たす医者は存在しません。理由は簡単で、売れっ子の先生は人気があり外来が混みます。そのため一人一人ゆっくり話を聞く時間を作るのも大変ですし、病棟へ行く時間を確保するのも難しかったりします。
重要な事は、今どういう医者を求めているかをはっきりさせる必要があります。
例えば「体調不良などを調べてもらう」「高血圧の管理をしてもらう」こういった事であれば、やはり話を聞いてくれる先生が良いと思います。
しかしすでに胃癌、胃癌疑いと診断されている方であれば、腕の良い外科を探したくなります。話半分でもいいから、腕が良かったり、数をこなしている先生に診てもらうべきだと思います。その代わり手術後は、相談に乗ってくれるような先生にも診てもらうというのが上手い方法かもしれません。
<余談>
「話をよく聞いてくれる」医者を探すのは比較的簡単です。話を聞くだけなら誰でもその気になれば出来ます。
やはり本当に難しいのは、「頭がキレる」「腕が良い」医者を探す事でしょう。
この2つだけは、誰でも出来るわけがなく、限られた先生のみが得られる称号です。
しかし自分自身にそういった称号がなくても、そういった先生方と「友人」「友好」関係を築けていれば、自身の価値が上がると思っています。
心不全チェックリストをうまく使ってください。
一般の方向けの、心不全チェックリストが日本循環器学会から発表されました。
10個の項目があり、それに該当すれば心不全の可能性があるというものです。
とは言え、10個すべてが重要というわけではありません。
例えば①に該当する方は非常に多く、これだけで心不全を疑うのはどうかと思います。
しかし②④⑥⑨⑩は、1つでも該当すれば心不全の可能性を感じます。
実際に心不全で病院に来られる方で一番多い訴えは、④の「息切れ」です。
ちなみにほとんどの息切れの原因は、「心臓」「肺」「貧血」のどれかで説明がつきます。もちろんそれ以外が原因であることもありますが、まずはこの3つが問題ないかどうかを調べる事が非常に重要です。
しかもそれらは比較的簡単な検査で白黒はっきりします。
「血液検査、心電図、レントゲン、心エコー」
この4つでかなり多くの情報が手に入り、そこから更に進んだ検査を行うかどうかの判断は、担当医師の経験や勘に委ねられます。
しかしまずは病院を受診しないと始まりません。
このブログをきっかけに病院を受診してくれる方が少しでも増えてくれれば幸いです。
<余談>
心不全と診断されると、治療方針は病院や医師によって大きく変わってきます。
良い病院に行けば必ず良い先生に出会えるという保証はなく、多くの方が悩まれるところです。先生と患者さんとの相性も大事です。
「全ての患者と相性が合う」、そんな神様みたいな先生は存在しません。
特別なコネクションがない限り、相性が合う良い先生と出会うには「運」が必要となってくると思います。
「地域で評判の病院に行っているのに、担当医は話をほとんど聞いてくれない」
そういった話は本当によく耳します。
しかし良い先生に出会える確率を上げる事は可能です。
それはまた次回に。
有意義な検査を受けましょう!
様々な病気があるように、検査も色々なものがあります。
そのためどの検査をどのように受ければいいか分からない方が多いと思います。
例えば胃癌や大腸癌かどうかをハッキリさせたければ、血液検査やCTを何度もやるより、胃カメラや大腸カメラをやった方が確実です。
確かに侵襲的な検査を行う前に、比較的負担の少ない検査で評価する事は大事かもしれません。
なので、一気に核心に迫る検査を行うかどうかは担当医の手腕にゆだねられます。
癌や循環器の病気の検査は日々進歩しています。
その中で循環器疾患の、特に狭心症や心筋梗塞の評価をする上で、非常に有益な検査は「心臓CT(冠動脈CT)」と「心筋負荷シンチ」です。
①心臓CT
胸や腹のCTを撮るのと同じ感覚で心臓の血管を描出する事ができる検査です。
上の写真は大雑把な情報しかありませんが、実はもっと細かく見る事が出来ます。
CTさえやってしまえば、かなりの確率で白黒はっきりするので、非常に有意義な検査と言えます。
しかし比較的手軽な検査で、ちょっとだけ悪い所も見つかってしまうため、いたずらに心配事を増やしてしまう事もあります。
ちなみにこの心臓CTは、いつでもどこでも出来るわけではありません。
江戸川区在住の方であれば、
①江戸川病院(江戸川区)
あたりをお勧めします。
その他の病院でも出来ますが、もし治療が必要になった場合を考慮するとこうなります。
自分は現在②の千葉西総合病院の循環器部長として勤務しています。
②心筋シンチ
心臓CTは万能な検査ではありません。
すでに狭心症の治療(カテーテル治療)をしていたり、血管の石灰化が著しい方は、心臓CTを撮っても上手く撮影できません。
ステントや石灰化周辺が白く光ってしまい、大事な所がうまく見えません。
そんな時に力を発揮してくれるのが、「心筋シンチ」というものです。
体に無害な放射性物質が心臓の元気な所に集まり、それを撮影します。
心臓の血流が悪い所には集まりません。
つまり心臓のどこら辺が血流が悪いかが分かります。
心臓を丸で表現し、下の方が黒く抜けているのが分かるでしょうか?
そこが心臓の血流が悪い場所です。
この所見が見られると、ほぼ間違いなく狭心症であり、カテーテル検査や治療へと続いていきます。
逆にこの検査で異常が見られなければ、多少怪しい病変があったとしても経過観察になり、1年後再検査という流れになる事が多いです。
また術後の再発チェックにも使い勝手の良い検査です。
江戸川区在住であれば、
①江戸川病院
をお勧めします。
この検査も他にも出来る場所はありますが、それらはどれも「薬剤負荷」と言って、
薬で心臓に負担をかけるというものです。値段が高い検査の割には精度が低く、やはり地味ではありますが「運動負荷」をするべきです。
運動負荷は、ランニングマシンの上で数分早歩きをしてもらい、かなり疲れてもらった(心臓にかなりの負担を掛けた)状態で検査を行います。
「薬剤負荷」は医師の診察が不要のため簡単に検査が出来ますが、「運動負荷」は医師同伴で行い、事前の診察も必ずあります。裏を返せば、それだけ精度が高いという事です。
どちらの病院も受診した当日にその検査を受ける事は出来ず、予約を取って後日行います。またかかりつけでなければ紹介状も必要です。
こういった診断や状態評価に非常に有意義な検査をうまく使い、安心した生活を送ってもらいたいです。
健診で心電図異常を指摘されたら・・・。
循環器外来をしていると、健診で心電図異常を指摘されたという方がたくさん来ます。
そんな心電図異常で一番多いのが、「心室性期外収縮」というものです。
波形はこんな感じです。
健診の心電図はだいたい5~10秒の心電図が記録されます。
その中に1回でも記録されると、心電図異常と診断されてしまいます。
しかし結局10秒程度の検査であるため、他の時間がどうなっているかは分かりません。
悪い不整脈が隠れているかもしれないし、ほとんど無いかもしれません。
要するに、健診の心電図1枚だけでは、期外収縮に関しては評価が難しいです。
とは言え、ほとんどの場合は体に無害であり、心配する必要はありません。
期外収縮を診る上で重要になってくるのが、問診や触診を含めた診察です。
まずは不整脈に伴う症状があるかどうかが重要です。
続いて30~60秒ほど脈を触れてみて、期外収縮の頻度を予測します。
頻度が少なければ、まず問題にならないので、簡単な心エコーを行い、心機能に異常がなければ「問題なし」で終了となります。
頻度が多いと思われる場合は、心エコー以外にもホルター心電図(24時間心電図を記録する検査)を行う必要があるかもしれません。
その後、心エコーやホルター心電図、患者さんの訴えなど総合的に判断し、薬を使用するかどうかを決めます。
普段何事もなくても、疲労やストレス、飲酒、睡眠不足などが重なると、不整脈の頻度は増えます。
自分自身、当直明けや体調がすぐれない時などに期外収縮が出ます。
「3回に1回脈が抜ける」という不整脈が5分くらい続いたり、痛みを伴う事もあります。
正しい知識があれば恐れる事はありません。
まずは良いものなのか悪いものなのかを正しく理解する必要があります。
健診で心電図異常を指摘されたらまずはご相談下さい。
医師が受けたくない・受ける必要がないと思う検査とは?
たばこは悪者??
世の中には色々な医者がいて、その中には少し偏った考え方を持っている人が少なくありません。もちろん自分にもそういった面があると思います。
そういった先生が担当になった場合、予想以上に傷ついてしまう事もあります。
「たばこ」が良い例だと思います。
例えば検査で肺癌が見つかってしまった時。
先生「今までタバコを吸った事がありますか?」
患者「20年前まで1日10本くらい吸ってました」
先生「そのタバコが肺癌の原因ですね。」
そう言われてしまうと、肺癌になったのはあなたのせいです。と言われているようなものです。
先生「今までタバコを吸った事はありますか?」
患者「一度も吸った事がありません」
先生「タバコを吸った事が無い人でも肺癌になる人はたくさんいます」
この場合だと、運悪く癌になってしまった可哀想な患者。
というイメージになります。
もちろんタバコが肺癌の原因になるというのはもはや常識になっていますが、肺癌になる原因はタバコ以外にもいくらでもあります。
それにも関わらず、「タバコ」はいつも悪者になってしまい、喫煙者が病気になると自業自得という印象を抱かせてしまいます。
タバコを推奨しているわけではありませんが、言い方一つで患者さんに与える印象がだいぶ変わります。
「あなたのせいではない」と言われれば、頑張って病気と闘おうと思ってくれる事もあるかもしれません。
とは言え、「今でも現役で1日40本吸ってます」と言われれば、さすがにそれはタバコのせいでしょ。とは思いますが💦
タバコ以外にも同じような例は色々あります。
患者さんやその家族に説明をする時、こう説明したら患者さんがどう思うか、という事を常に考えていきたいです。
有名人と病気 「小渕恵三 元総理大臣」
「心房細動」を患者さんに説明する上で、一番最初に例として挙げています。
2000年に心房細動を原因とした脳梗塞により亡くなられました。
当時はまだ心房細動が脳梗塞の原因になるという事実が、世間にあまり浸透していなかったように思います。
現在ではかなり普及していて何種類もある血液をサラサラにする薬が、当時はまだワーファリンという納豆禁止の薬しかありませんでした。
その影響か、今でも「循環器の薬=納豆禁止」と思っている方は少なくありません。
心房細動が原因の脳梗塞の死亡率は10%未満と言われており、それほど高いわけではありませんが、それでも通常の脳梗塞の3倍程度と言われています。
心房細動合併の脳梗塞は、梗塞の規模が大きいためです。